友達とは奇妙なものだと思う。

友達とは奇妙なものだと思う。
義理叔父の最も仲の良い友達は中学の1年から大学を卒業するまでヒマさえあれば、ほぼまる一日べったりくっついて生活していたという新聞記者の友達だが、このひとがニューヨークにいた義理叔父に手紙を送ってきたことがあった。
「こんな会社では新聞記者などやっていられないのでおれは会社をやめて蕎麦屋をやることにした」と書いてある。

義理叔父は、まだインターネットがなかった頃なので「ヤメルナ」と電報(!)を打つと、もう何年も会っていない友達に会いにいちばん早い便のユナイテッドで日本にでかけた。
待ち合わせた神戸で、ホテルに隣りあった部屋をとって、交代で煙草をふかしながら、吸い殻でたちまち山盛りになった灰皿が載ったテーブルをはさんで、ほとんど黙って向かい合っていた。

ときどきどちらからともなく「腹減ったな」と述べて外に出て食事に行くだけなので、なんとも手持ち無沙汰で、仕方がないのでレンタカーを借りて、中年のおっさんがふたりで、奈良まで出かけたそうである(^^;)

4日間、そうやって、無言を無言で塗り込めたような毎日を過ごして、帰り際に
「会社、やめるの、やめたよ」
「あたりまえだ」という会話を交わして、おぼえている会話はたったそれだけだった。

「日本まで行く必要なかったんじゃないの?」と、わしが訊くと、
「バカだな、ガメ、あいつがおれに手紙だすなんて異常な事態に行かないわけにはいかないじゃないか」という。
「第一、あいつがおれのニューヨークの住所を後生大事に5年間もおぼえていたのを知ったときには心臓がとまるかとおもったぜ。そういう奴じゃないんだよ。よっぽど会社でくやしいことがあったんだろう」
と述べる義理叔父の目には涙が浮かんでいたのをおぼえている。
念のために訊ねてみると、それからまた10年近く会っていないそうで、どこまでもヘンな人たちであると思う。