「証人喚問があれば、参ります」前川喜平・前文部科学事務次官

「証人喚問があれば、参ります」
 安倍晋三首相の40年来の“腹心の友”である加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が愛媛県今治市の国家戦略特区に獣医学部を新設する問題で新展開があった。
 内閣府が文部科学省に「総理のご意向」などと伝えた文書の存在を認めていた前川喜平・前文部科学事務次官が25日、都内で記者会見し、自民党が拒否している証人喚問に応じる意向を示した。
 さらに「文科省の立場で私が受け取った文書に間違いない」と改めて証言し、安倍政権の弁明と真っ向から食い違う爆弾証言をしたのだ。
 文書について松野博一文部科学相が「存在は確認できなかった」と発表したことについて、前川氏は「答弁は大変残念。大臣や関係者を含め、そう言わされるふうに追い込まれてしまったのではないか」とも話した。当時、大学認可の権限を持つ文科省の事務方トップだった前事務次官の会見は自民党に衝撃を与えた。
 加計学園と安倍首相の問題を特報したのは「週刊朝日」(3月17日号)。「第2の森友学園疑惑」として、今治市内に新設される岡山理科大獣医学部の用地として土地を無償で譲渡するとした市の2016年度補正予算案の内容や、「国家戦略特区」事業として異例のスピードで新設が認められた経緯、加計学園の加計氏について安倍首相が「どんな時も心の奥でつながっている友人」(2014年5月)と評するなど親密ぶりを報じた。
 その後、朝日新聞が5月17日、文科省の内部文書とみられるA4判8枚の資料の存在を報道し、事態は急展開した。
 内閣府の担当者が計画の早期実現について「官邸の最高レベルが言っていること」「これは総理のご意向だと聞いている」などと発言したことが克明に記録されていたのだ。
 文書について文科省は「存在は確認できなかった」と発表したが、前川氏は朝日新聞の5月25日付朝刊で、「文書は本物です」とその存在を認めた。さらに会見では、獣医学部の新設については加計学園を前提に検討が進んだことに「行政がゆがめられた」と語った。
 森友学園の「忖度(そんたく)」問題に続き、安倍首相の“お友だち”人脈から次々に出てくる疑惑に安倍首相の苛立ちも伝わってくる。ある自民党幹部はこう話す。
「森友学園、加計学園の疑惑が長引き、安倍さんは周辺に『鬱陶しい気分だ』と漏らしている。サミットから戻ってから対応を協議する予定だったが、事態が早く動き出した」
 自民党内の受け止めも二分されている。別の幹部はこういう。
「加計学園しか取れない新設の条件なんだから、40年にわたる悪友関係の安倍首相と加計氏のあうんの呼吸で便宜を図ったのは明白。明らかに政治的な動きがあったはずだ」

 官邸の圧力に屈しなかった前川氏は、世界的な産業用冷凍冷蔵機器メーカー『前川製作所』の御曹司で、妹は中曽根弘文元外相に嫁いでいるという。
「官邸のコントロールが利かない人物」(前出の幹部)
 一方で、別の幹部は強気にこういう。
「背景には文科省の権力闘争があり、天下り問題で処分を受けた前川の官邸への恨みが生々しいこともあり、文書が本物だとして、どれも間接的な表現にとどまり、結局は忖度話になる。野党がいくら騒いでも、うやむやに終わるだろう」
 読売新聞は朝日新聞が加計文書の存在を報じた5日後の22日、前川氏が文科省に在職中、援助交際の交渉の場になっている東京都新宿区歌舞伎町の出会い系バーに、頻繁に出入りしていたと報じた。それについて前川氏は会見でこう疑問を呈した。
「行ったことはある」と認めたうえで、「テレビの番組でこういったバーで働く女性について紹介していて、実態を聞いてみようと(行った)。ここで働いている女性たちは、親が離婚してるひとが多いとわかり意味があった。読売新聞がなぜ報じたのか」と疑問を呈した。
 安倍首相がサミットから帰国後、前川氏の証人喚問は行われるのか。注目だ。
※週刊朝日オンライン限定記事