銚子市 補助金トラブル 財政破たんに瀕する

< 加計の千葉科学大学と、破綻決定の銚子市 >
加計学園・千葉科学大学を誘致したものの多額の債務を抱えて苦しむ千葉県銚子市。
23日投開票の市長選挙で、加計学園を誘致した元市長の野平匡邦氏が立候補予定だ。野平氏がこれまで選挙公約のトップに掲げてきた「 国家戦略特区の活用 」と「 千葉科学大学に獣医学部の新設 」を外したことが分かった。
「 国家戦略特区( 議長・安倍晋三内閣総理大臣 )」の指定をめぐっては、安倍首相と40年来の友人が経営する加計学園( 加計孝太郎理事長 )が優遇されているのではないか、と国会で追及されている。国家戦略特区法案の審議が間もなく始まり、追及が本格化するのは必至だ。野平氏の選挙事務所は「( 国家戦略特区の公約取り下げは )候補本人の考え 」と話しているが、加計学園側から特区を公約に掲げないようにとの要望があった、との説がある。
野平氏は1997年( 平成9年 )から1999年( 平成11年 )まで岡山県副知事。( 岡山県は加計学園理事長の加計孝太郎氏のお膝元 )。2002年(平成14年)から現在まで加計学園・岡山理科大学の客員教授。加計理事長との太いパイプを活かした野平氏は2002年、大学誘致を選挙公約に掲げて初当選した。
「 加計学園の加計孝太郎理事長は、安倍首相が自ら『 腹心の友 』と言うほどでしょう。 田舎町への傲慢( ごうまん )さを感じますね 」こう話すのは、千葉県銚子市の笠原幸子市議だ。
加計学園とは岡山県の学校法人で、傘下に多数の学校を抱える一大グループ。加計理事長は安倍晋三首相と40年来の親友だ。本誌3月17日号が報じたとおり、安倍首相が推し進める国家戦略特区制度で、愛媛県今治市に傘下の岡山理科大の獣医学部を新設。 公有地36億円相当が無償譲渡された。 また昭恵夫人が系列認可外保育施設の名誉園長を務めるなど「 第2の森友学園問題 」とも指摘される。
そんな加計学園が今、
銚子市で論争の的だ。
4月23日の市長選に返り咲きを期して立候補を表明した野平匡邦氏は、公約として加計学園が地元で運営する千葉科学大に、国家戦略特区制度を利用して水産・獣医学部を新設することを掲げているのだ。 今治市と同じ構図である。
野平氏は自治省を経て岡山県副知事を務め、02年には岡山理科大客員教授に就任。同年7月の銚子市長選で千葉科学大の地元誘致を訴えて初当選を果たし、同校は04年春に開校した。
だが、実はこのときの
“ 補助金トラブル ” が、今も尾を引いているのだ。
大学誘致は市が加計学園に92億円もの補助金を提供し、市有地9.8ヘクタールを無償貸与することで実現した。ところが、補助金の大部分が 市の「 借金 」だったことなどから市民から批判が噴出。開校前の03年春に銚子市の市議会議員らが岡山県の加計学園本部を訪れ、補助金減額を直談判した。前出の笠原市議がこう話す。
「 当時、開校にどれくらいカネがかかるのか明確な話がなかった。いくらか建築や開発の資料があり、そこから150億円だという建設費があまりに高いので 本当かと直談判に及んだ 」
結局、加計学園が補助金14億6千万円を返還することで市と合意。市側はさらに約8億円の辞退を要請し、加計学園が市民に貢献できる施設を建設することに協力することになった。だが、「 今もって加計学園の『 還元 』は実現していない 」と加瀬庫蔵市議らは主張。銚子市役所幹部もこう説明する。
「 加計学園側は14年に千葉科学大が看護学部を設置した際、津波の避難に対応できる高い建物を建設。地元の人も万一の時はここに避難できるから、約束した『 市民への還元 』にあたると主張。 辞退を要求していた8億円分で美術館などを建てるという話だったのに約束が違う、こちらは認められないと拒否しています 」
現在、市の財政は市債残高約300億円を抱え火の車。財政を悪化させた一つの要因は千葉科学大への補助金支払いのための借金で、利子を含めた返済額は84億円で毎年約4億円を返し、14年度末で約44億円もが借金として残る。市は斎場の使用料金を6千円から1万2千円に値上げ、市長など特別職の給与を減額するなどして支出削減を図っているが、一般会計で資金が足りなくなり約4億円を水道特別会計から借りて急場をしのぐ綱渡り状態。
17年度には北海道夕張市に続く
財政破たんに瀕することを越川信一市長も認めている。
また、大学誘致の経済効果は69億円、財政効果79億円とされたが、3年前に市が試算したところ経済効果は約21億円、財政効果は約14億円にとどまることが判明した。そんな状況下で市長選では水産・獣医学部の新設話まで持ち上がり、地元は疑心暗鬼になっているという。