当時の警視庁刑事部長・中村格氏本人が、逮捕をストップさせたことを言明している

たしかに山口氏はTBS在職中にその職権をちらつかせて女性と会っており、TBSに説明責任があることは言うまでもない。しかし、TBSが捜査をつぶしたというのはあまりにも「あり得ない」話だ。

 たしかに、テレビ局や新聞社の社員が起こした事件を握り潰すということが昔は横行していたが、それは過去のもの。メディアが直接的な警察批判に踏み込むようになったここ20年あまりは、警察はマスコミ関係者の事件に甘くないし、むしろ積極的に情報を流しているほど。
 現に、ここ10年でもNHKのアナウンサーや放送技術局制作技術センターの職員、日本テレビの『恋のから騒ぎ』プロデューサー、テレ朝のコンテンツビジネス局社員らの強制わいせつ罪や、フジテレビ営業局社員の女性宅住居侵入など、NHKと民放キー局社員が逮捕されたニュースは数え切れないほどある。
 また、山口氏が所属していたTBSにいたっては、1999年に報道制作局長が痴漢行為で現行犯逮捕されたのをはじめ、報道局社会部記者が住居に侵入して入浴中の女性を盗撮した事件や、さらに別の社員も痴漢で捕まるなど逮捕が相次いだ。よもや、TBSが警察から出ている逮捕状にストップをかける力などもっていない。
 むしろ、所轄が逮捕寸前に警視庁刑事部長が指揮して逮捕を潰し、その後、不起訴にもっていった今回の経緯は、よほど大きな力がなければ成し得ないものだ。
 そして、前述したように「菅官房長官の片腕」として知られる当時の警視庁刑事部長・中村格氏本人が、逮捕をストップさせたことを言明しているのだ。さらには、山口氏が今回の報道を「安倍首相の右腕」たる北村内閣情報官に相談していたと思われる“誤爆メール”の存在も明らかになっている。捜査潰しに関与していたのは、明らかに官邸なのである。
 ところが前述したように、ほとんどのマスコミはこの「官邸による捜査潰し」疑惑を避けている。それどころか、TBSのせいだなどという的外れな陰謀論が跋扈し、官邸の介入により捜査がつぶされたという重大疑惑が隠蔽されようとしている。