国家戦略特区の件の告発状

           告発状

平成29年8月21日
松山地方検察庁 検察官 殿

告発人 

被告発人 寺井 政博(愛媛県今治市議会議員)
        菅 良二(愛媛県今治市市長)
       加計 晃太郎(学校法人加計学園理事長)
       渡邊 良人(学校法人加計学園事務局長)
     
 下記のとおり被告発人らの行為は、収賄罪(受託収賄罪及び事前収賄罪)及び強要罪及び 詐欺罪及び背任罪及び横領罪及び公職選挙法違反に該当するので、処罰を求めたく告発します。

                   記

1 告発事実

 被告発人寺井政博は平成8年より今治市内にある寺井建材の代表取締役をしている。そして、平成17年より4期連続で今治市議会議員に当選した。

 平成22年より、被告発人寺井政博は公益社団法人愛媛県浄化槽協会(以後「協会」と表記する)の会長に就任した。

 平成23年2月23日から平成24年2月23日まで被告発人寺井政博は今治市議会新都市開発整備特別委員会の委員長に就任したが、当時の今治新都市開発地区の出店情報、DCMダイキの出店の可否情報など、市役所の内部機密情報を外部の利害関係者に漏えいするようになった。

 さらに、平成25年3月1日から平成26年12月18日まで今治市議会新都市開発整備特別委員会の委員長に就任すると加計学園の岡山理科大学獣医学部新設があるという重要な機密情報について「俺のおかげ」「知事や誰とは言わないが日本の国で一番偉い人に頼まれてやっている」と、獣医学部の新設が安倍晋三首相の指示により、自分が獣医学部の誘致を行っていることを周囲に自慢し、機密情報を漏えいしていた。

 なお、平成29年2月28日から被告発人寺井政博は市議会国家戦略特区特別委員会の委員長に就任している。

 平成27年、協会の事務所に新事務所(鉄骨構造2階建て延べ床面積約100平方メートル)を建築する際、被告発人寺井政博は、愛媛県から天下りした参与の松井氏の知人で株式会社日創設計の濱本氏に設計を行わせた。実際の工事は合見積の形態をとって、前回の事務所改修工事を行った松山土建株式会社に選定し施工させた。

 しかし、この建築見積金額は市価の2倍の6000万円以上となっており、被告発人寺井政博の寺井建材に工事資材を発注する形で、本来の価格との差額分3000万円近くを着服した。この行為は刑法246条(詐欺罪)及び刑法250条(背任罪)及び刑法252条並びに刑法253条(横領罪)に違反する。

 そして、自分が今治市議会議員並びに、協会の会長であるという地位を利用して、平成22年より自分の支持者の親戚縁者を協会に縁故採用するようになった。

 平成29年現在、退職者も含めてその数は10名である。その手口は、公募採用とするが、実際は自分が縁故採用する人物が採用試験の点数が低く採用基準にまるで満たなくても、面接時に高得点にして合格させるというものであった。

 そして、被告発人寺井政博は、平成22年から平成29年に至るまで、市議会議員としての公務出張時、同時に協会の出張もしたことにして、今治市および協会の2箇所から出張旅費を二重に請求し着服していた。

 また、これに疑問を抱く協会職員がいても、被告発人寺井政博の縁故で採用されているため着服を拒否できず、また協会職員間でも被告発人寺井政博の一連の悪事の数々を隠蔽するための強要行為が日常茶飯事となっていた。この行為は刑法223条(強要罪)及び刑法246条(詐欺罪)及び刑法250条(背任罪)及び刑法252条並びに刑法253条(横領罪)に違反する。

 平成22年から29年にかけて、被告発人寺井政博は協会職員を自身の選挙活動に動員し選挙ポスター張りなどを行わせていた。この行為は公職選挙法199条及び199条の2及び199条の3 に違反する。

 この際、悪質なことに被告発人寺井政博は協会内に政治連盟なる政治団体を設置し、選挙名簿の送付および協会の資産を自身の政治活動のために横領し、職員に命令して政治活動を行っている。この行為は刑法246条(詐欺罪)及び刑法250条(背任罪)及び刑法252条並びに刑法253条(横領罪)及び公職選挙法199条及び199条の2及び199条の3 に違反する。

 平成27年6月4日、被告発人寺井政博は菅良二と加計晃太郎らと共謀して、内閣府国家戦略特区における学校法人加計学園岡山理科大学の獣医学部新設の申請にあたり、複数の当時の市議会議員および現職市議会議員に対し、1000万円の賄賂を渡していた。この行為は刑法197条(収賄、受託収賄及び事前収賄)に違反する。
 
 このことが本当か確かめるため、告発人は平成29年7月26日、今治市議会が乃万公民館にて開催した第4回議会報告会の質疑の場において「菅良二市長から1000万円賄賂をもらっていない者は起立してください」と問うたら、松田澄子議員と渡辺文喜議員だけが起立した。被告発人寺井政博は他12名とともに起立しなかった。そのため、告発人は被告発人ら計13名の市議会議員が贈収賄の事実を認めたものとして松山地方検察庁に7月27日(その後7月31日訂正して再提出)で告発した。

 平成29年7月28日、松田澄子議員から「今日午後、今治市議らほぼ全員が集まり7月26日の議会報告会の情報交換をした」との話があった。7月27日、告発人が松山地検へ告発した件が世論において全国的に予想以上の反響を受けていたため、7月28日で議員間で口裏あわせをして隠蔽工作をした模様である。

 平成29年7月28日、今治市議会が別宮公民館にて開催した第4回議会報告会の質疑の場において、告発人が市側からマイクを渡され「加計学園や加計孝太郎や菅良二市長から1000万円賄賂をもらっていない者は起立してください」と問うたところ、出席していた13名の市議会議員で即座に起立した者はいなかった。

 平成29年7月29日、前日の告発人がいた報告会に出席して起立しなかった黒川美樹議員に関係者が「賄賂をもらっていないのに、なぜ起立しなかった」と問うたところ「議会の雰囲気というのがあり、自分の意見や行動が自由にできないようになっている。潔白な人が自ら起立させないようにしているので自分も立てなかった。」ということであった。そのため同議員については告発対象から外した。

 しかも、7月27日の松山地検への告発において被告発人として対象になっている松田敏彦議員についても、関係者が聞き取りしたところ「議会の雰囲気があって、自分から潔白だと言えない。しかたないんで、自分は告発対象者のままでいい」と話したという。

 両議員の話により、7月27日分の告発状(その後7月31日訂正して再提出)における被告発人寺井政博らによって両議員に対する強要行為が行われていることが判明した。これは刑法223条(強要罪)に違反する

 そのため平成29年8月1日、告発人は計12名の市議会議員を贈収賄で松山地方検察庁に告発した。これによって贈収賄を認めた今治市議会議員は全部で25名になった。この行為は刑法197条(収賄、受託収賄及び事前収賄)に違反する。

 この事実を、告発人はブログやツイッターなどで全国に報じた。すると、爆発的な反響があり複数の投書が寄せられた。

 また、平成29年8月1日、加計学園の元関係者から「加計晃太郎から今治市などの政治家への賄賂は事務局長の渡邊良人が運んで渡している」との証言が告発人にあった。

 平成29年8月9日、告発人が共同代表をつとめる今治加計獣医学部問題を考える会(以後同会と表記する)の共同代表の黒川敦彦氏宛に匿名で被告発人らの悪行を告発する文書が郵送されてきた。

 さらに平成29年8月10日、同会の黒川氏に電子メールで今回の告発人が贈収賄対象とした議員のうち18名が確実に収賄をしていると証言する者があった。

 平成29年8月19日、告発人に対して、被告発人寺井政博の関係者から「今年の5月ごろ会合で寺井本人から『俺、今回の獣医学部誘致で市長からカネもらったんだよ。』と自慢げに話された。」という証言があった。

 さらに地元政界関係者から「獣医学部設置で議会が反対しないよう、国家戦略特別委員会の委員長である被告発人寺井政博議員に、他の議員に分配してもらうため億単位のお金が、加計学園から市長を経由し寺井議員に渡されたのだが、寺井はこの収賄で得たお金を一部の議員にしか配らず自分でネコババしている。そして他の議員には誘致の議決に賛成するよう強要している。」と、この事実を裏付ける証言があった。

 一連の贈収賄が加計学園によって行われたことを裏付けるかのように、さかのぼること平成29年7月31日、妻が広島加計学園の教育審議委員を務める夫の自由民主党衆議院議員下村博文氏に対し、被告発人加計晃太郎の部下の加計学園秘書室長山中一郎が200万円の政治資金を渡していたことについて下村議員らが政治資金規正法違反で東京地検に告発された。これは、被告発人加計晃太郎が常習的に政治家へ多額の賄賂を渡していたことの証左である。
 
 このことからも、被告発人加計晃太郎が理事長の加計学園による今治市への獣医学部新設にあたり、被告発人の渡邊良人を通じて、被告発人の菅良二市長に約3億円の現金贈賄を行い、それによって、市議会議員が反対意見を言わないよう、菅良二がその収賄資金をもって被告発人寺井政博ら市議会議員を買収し、議会に全会一致の議決をさせていたことが明白となった。この行為は刑法197条に違反する。さらに被告発人は他の議員に渡す賄賂を独り占めし、他議員には獣医学部誘致に賛成するよう強要していた。刑法223条(強要罪)に違反し、議会制民主主義を踏みにじる悪質な行為である。

 このように、被告発人寺井政博は、今治市議会において獣医学部新設で市議会議員の意思決定をとりまとめる国家戦略特別委員会委員長の責任ある地位にありながら、その地位を悪用し、市の機密情報を外部の利害関係者に漏えいした上、利害関係者である加計学園から多額の不正な賄賂を受け取り着服していた。また、兼務する公益法人の会長の地位を悪用して、不正で違法な横領や背任行為、就職斡旋、政治活動を多数行っていた。

 さらに、今治市議会では有権者の民意で選出された議員一人ひとりの自由な発言と行動が、これら、一連の贈収賄に関係している議員らによって妨害され、獣医学部新設に反対せぬよう強要されていることも判明した。議会制民主主義がまったく機能しておらず、悪質であるので告発する。

2 罪名・罰条
 収賄罪、受託収賄罪及び事前収賄罪  刑法197条
 強要罪 刑法223条
 詐欺罪 刑法246条
 背任罪 刑法250条
 横領罪 刑法252条並びに刑法253条
 公職選挙法199条及び199条の2及び199条の3

3 添付書類
 8月9日の黒川敦彦氏への投書……1通
 8月10日の黒川敦彦氏への電子メールの投書……1通
 寺井建材株式会社の法人登記簿写し……1通
   
4 その他
 告発人は、今治商工会議所の会員でコンサルタント業をしているが、平成29年3月に、今治市で被告発人寺井政博が認可申請、建設を行っている学校法人加計学園岡山理科大学獣医学部について「バイオハザードによる環境汚染」「不正な公金支出があるのではないか」という指摘を知人らから受け、被告発人寺井政博を含む、多数の今治市議会議員、愛媛県議会議員らに獣医学部誘致の経緯について郵送で問い合わせた。ところが、回答者は1名だけであった。市民への情報開示や十分な説明がされないまま96億円もの巨額の公金が支出され36億円相当の土地が加計学園に無償で譲渡される点を不審に思うようになった。

 そのため、情報公開や、住民への納得のいく説明を求めて、自ら「今治加計獣医学部問題を考える会」の共同代表となり、ボランティアで活動するようになった。

 そして、同会では国や今治市に対して7800ページを超える大量の情報公開を行った結果、加計学園、今治市、愛媛県、国会議員、文部科学省などで長年にわたり議会から公務員にいたるまで収賄行為や行政プロセスに特定の利害関係者への利益誘導を行っている実態がわかってきた。

 被告発人寺井政博が、告発人らからの再三の問い合わせや質問に誠意ある回答を示さないばかりか、被告発人加計晃太郎が最高責任者である学校法人加計学園が今治市から36億円相当の土地を無償で譲り受け、96億円の公金をもらって獣医学部を開設させてもらうのに、加計晃太郎氏が市民の前に出てきて一度もあいさつ、自ら説明をしてこなかった事実は世間一般の常識からしても「おかしい」と思っている。

 地元の今治市では「菅良二市長が地元市議会議員らに1000万円のワイロを渡して、加計学園の獣医学部設置に反対しないようにした。」と政界関係者で話されている。

 7月27日の松山地検への告発以降、自民党議員の有力な関係者から「武田さんが松山地検に贈収賄で告発したことを聞いて、思い当たることがある。獣医学部新設の話が数年前に具体化してきて、当初反対してた議員たちが愛媛もいたのだけど、ある日突然、てのひら返したように全員賛成に回った。それから反対する人がいなくなった。だから、やっぱり賄賂があったと思う。」という話が告発人にあった。

 もし、今回、被告発人らが「収賄について潔白」であるのなら、告発人の問いに対して即座に否定できるのであり、できぬどころか、認めるというのは、民主主義、議会政治の根底を揺るがす重大な事態である。

 それだけでなく、被告発人らは今治市議会議員に対しても、獣医学部新設に賛成するよう強要行為を行っていたことが判明し、議会制民主主義を根底から揺るがす悪行を行っている。

 本件において被告発人加計晃太郎は国会への度重なる証人喚問にも応じず、週刊誌でも報じられたように逃げ回り隠遁生活を続けているのは、国民に対して、表に出て来て説明できない隠し事、収賄や詐欺のような悪事をはたらいていることが自明である。

 そのような人間が、国や自治体からの助成金や融資を受けておきながら、世間に公明正大な姿で情報開示せず、使途不明な支出を行っていることは国民全員に対する不利益であるので告発する。

厳正な処罰を求める。

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