福臨門酒家 丸ビル店

少し前のことになるが
先輩が昇進した
実際はたいした昇進でもないし
先輩の実力からすれば
まだまだ将来を望めるのだけれど
謙虚なその人は
ほとんど躁状態になっていて
奥さんと二人でわたしを招待してくれた
丸ビルの最上階で中華料理
福隣門酒家
喜という名前のついたランチのコースで料理が次々に運ばれてきて
食材の数を数えると相当になると思う
わんこそばかと思うくらいのタイミング
おなかいっぱい
でも最後のごままんじゅうとマンゴープリンまで食べきった
同じ名前の店が銀座にもあるし
案内を見ると香港や上海などにもある
味付けは控えめで日本人風にしてある感じがする
横浜中華街でやたらに五香粉などのかかったものや
チンゲンサイのクリーム煮にしてもやたらにクリームが中華風なのとは少し違う
ユニバーサルな感じ
中華街ではやはり味も極彩色であって欲しいし
丸の内なら品行方正という感じでもいいと思う
先輩の奥さんは昔から美人だったけれど
最近はさらに美人でうっとりだ
鼻のあたりから唇にかけてのラインがいいと先輩は言っていた
わたしなどは職場が男性ばかりで
女性を見るのは映画とかテレビばかりだけれど
先輩と奥さんを見ていると
ひとりの女性を大切にする人生はいいものだと納得できる
先輩と奥さんは少し年が離れていて
奥さんはもちろんわたしよりも年下で
奥さんのお顔の向こうには皇居の緑などを眺めながら
おいしくいただいた
先輩たちには子どもがいないから
ふたりとも若々しいのかもしれない
ランチの時間は6割くらい席が埋まっていて
男性を交えているのがそのうちの2割くらい
それも年配
あとは女性同士でそれも年配
高尚な広東料理という感じ
屋台とは対極
先輩とは有楽町のガード下などで
目玉焼きソース掛けご飯など
C級グルメを自慢しあったりするのだが
先輩の奥さんはやはりこのような場所が似合う
失礼な言い方かもしれないが、得する人生である
悩みはないこともなくて、やはり介護のことでは少し疲れている様子だった
ヨーガもフラメンコもやってみたけれど
体が硬いからうまくならないのだと言っていた
アルゼンチンタンゴの話を少しした
奥さんの妹さんは歌舞伎とか能狂言が好きで
見に行く前にいろいろと調べて勉強するのだという
そんな資料がだんだんたまっているらしい
人形浄瑠璃とかの話
近松の心中ものとか
話は情熱的だけれど実際の部屋は
一種の「片付けられない女」ではないかと言っていた