晴海の東京五輪「選手村」予定地 破格の安値で売り払い

森友疑惑の出発点は8億円値引きの国有地払い下げ。実は小池都政にもソックリな問題がくすぶっている。中央区晴海の東京五輪「選手村」予定地、東京ドーム3個分に当たるオーシャンビューの都有地を破格の安値で売り払ったのだ。

 昨年夏の知事選真っただ中の7月28日。知事不在期に東京都・都市整備局は選手村の建設事業者として、三井不動産レジデンシャルを代表とする大手不動産11社による企業グループを選定した。12月には予定地の譲渡契約を交わしたが、驚くのはその売値である。

 約13.4ヘクタールの土地の値は129億6000万円。1平方メートル当たり9万6784円は多摩地区や伊豆七島並み。しかも都は2012年に予定地から約1キロ離れた同じ晴海の都有地を1平方メートル当たり103万円で売却していた。つまり単純計算で10倍強の値がつくはずの都有地を約1200億円引きで売り払ったのだ。

「選手村は大会後、11社の手で巨大マンション群や商業ビルに生まれ変わります。用地の取得額が安いほど、11社の開発利益は増える“おいしい話”です」(臨海部開発問題を考える都民連絡会事務局長の市川隆夫氏)

 森友疑惑と3ケタ違い。五輪に便乗した異次元レベルのバーゲンセールの理由について、都市整備局は「選手村要因」なる特殊事情をあげて、こう説明する。

「五輪開催に間に合うよう制約された工期で選手村を整備し、分譲はさらに大会後なので資金回収に長い時間がかかる。廊下幅を広く取るなどIOCの選手村基準に従うため、建物の設計が制限されるのも収益性低下につながります」

■大手メディアはこぞって沈黙

 都市整備局は「選手村要因」を考慮した土地評価の調査について、一般財団法人「日本不動産研究所」に丸投げ。日刊ゲンダイが不動研の調査報告書を情報公開請求すると、都の開示資料は肝心の算出根拠となる数値が全て黒塗り。空前の安値をはじき出した経緯は、さっぱり分からない。

「予定地の譲渡契約書を開示請求すると、後ろめたさの表れか、〈(11社が)著しく収益増となることが明らかになった場合〉に〈別途協議する〉旨が盛り込まれていました。それでも抽象的な文言は逃げ口上にしか思えません」(市川隆夫氏)

 非開示だった森友疑惑の国有地と異なって選手村予定地の売値は公開済み。破格の安値を知りながら、大手メディアの追及は甘い。譲渡先がチンケな学校法人と大手不動産との違いだけで対応を変えるのか。

 弱小事務所の芸能スキャンダルは容赦なく叩き、大手事務所には及び腰――。そんな不文律すら彷彿させる大マスコミの沈黙ぶりだ。