“グルメ特集でライターたちを悩ませるのは、明らかに不味い店に当たってしまったときだ。はっきり不味いと書けば営業妨害になりかねないし、ウソを書けば雑誌の信用を損なうことになる。その板ばさみになったグルメ・ライターたちが駆使する表現には、暗号めいたウラ法則がある。
「味の格闘技」(量がやたらに多いだけで、ちっとも美味くない)
「冒険にあふれた味」(アイデア料理が大ハズレだったときに便利な表現)
「野趣に満ちた料理」(まったく洗練されていない、という意味)
「個性的な味」(ビケイとはほど遠い女性をほめるときのもっとも無難な表現は、個性的。その表現を料理に応用したもの)
「毎日食べてもあきない味」(あきるような特徴がないということ)
「男性向けの味」(女性ライターは、しばしばこの表現で逃げる)
「ハマればやみつきになる味」(ハマる人はなかなかいないだろうという意味が、暗にこめられている)
美味い店をほめるときよりも、ライターさんたちの腕は、ずっと冴えているといえるかもしれない。”