なるほど。こういうこともできるのか。裁判所がどう対応するか、どうたいおうしてもくるしいところだろう。いつものことながら。
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すでにNHKのニュースなどで流れているようですが、本日、霞が関の東京地方検察庁に、全国から集まった数十通の告発状を提出してまいりました。
財務省の官僚7名を、被疑者特定して、公用文書等毀棄罪での刑事告発です。
もちろん、「なんか怪しいみたいだから、お上で捜査してください」というような検察に期待をかけた、やさしい告発ではありません。諸資料により、当会のイケメン法曹チームが、佐川理財局長らの答弁の嘘を完全に暴いております。
というわけで、本日午後3時の時点で、告発状はWebで公開されておりますが、あらためて、概要をご説明しようと思います。
まず、公文書の保存についてですが、これは、いわゆる公文書管理法(正式名 公文書等の管理に関する法律)で規定されています。
この4条に、
「行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。」
と定められており、
三 複数の行政機関による申合せ又は他の行政機関若しくは地方公共団体に対して示す基準の設定及びその経緯
四 個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯
とされています。森友学園事件の場合、
三は、航空局や大阪の私学審議会との折衝の記録
四は、まんま、森友学園との交渉記録ですね。ちゃんと「経緯」とまで書いてあります。
すなわち、航空局との交渉も、森友学園との交渉記録も、公文書管理法で、作成を「しなければならない」と規定されているわけです。国有地の売却の大幅値引きに関わる交渉ですから、「軽微なこと」ということはありえません。
そして、実際に、佐川局長も「作成した」ことは認めています。そして、細則に基づいて廃棄した、というのが、主張なわけです。
そして、第五条では、
第五条 行政機関の職員が行政文書を作成し、又は取得したときは、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。
とされています。すなわち、各行政機関で、行政文書の保存期間を決めるということです。その保存期間が定められているのが、財務省の場合、「財務省行政文書管理規則」です。
さて、それで、問題は、森友学園の土地売買にかかわる記録がどういう扱いになるか、が問題になるわけですが、これについては、当会法律家チームでも、いくつかの説が出てまいりました。
①30年説
公文書管理法第5条では、会議録や協議録等の文書は、それ単独では保存期間1年 であっても、「相互に密接な関連を有する行政文書」は「一の集合物」として「行政文書ファイル」にまとめなければならない」と書いてあります。そして、「行政文書ファイルの保存期間満了時期は、行政文書ファイルにまとめられる 行政文書のうち保存期間の満了する日が最も遅い日となるものに合わせる」こととされている。
だから、契約書が30年保存なので、交渉記録も、同じ青いファイル(だそうです。財務省の方談)に入れて、30年保管が原則。
②10年説
もし、30年説にあたらないという解釈があるとした場合でも、「財務省行政文書管理規則」にちゃんと、「国有財産の管理及び処分に関する決裁文書又は管理及び処分に関する重要な実績が記録された文書」の保存期間は10年と書いてあります。
値引きの交渉というのは、(それが完全に無視されて、何の影響も与えなかったようなレベルの交渉ならともかく)、実際に値引きが行われた交渉なのですから、「処分に関する重要な実績が記録された文書」そのものです。
それから、「4.他の行政機関との会議に検討のための資料として提出された文書及び当該会議の議事が記録された文書その他申し合わせに至る過程が記録された 文書の保存期間は10年」とも明記されていますから、航空局や大阪府教育庁と交渉記録は、これにあたりますね。
というわけで、この場合は、最低保存期間は、10年です。
③5年説
上の②で、ほぼ決まりみたいなものですが、②が当てはまらないというような苦しい言い訳がある場合でも、この「財務省行政文書管理規則」には、法人に対して、「不利益処分をするための決裁文書その他当該処分に至る過程が記録された文書」の保存期間は、5年と規定されています。
で、近畿財務局が森友学園と交わした売買契約書には、契約の締結日から10年間有効な買戻し特約が付されています。これはね、法的には「不利益処分」そのものです。
なので、10000歩譲っても、この文書の保存期間は、最低でも5年。しかも、それは、不利益処分有効期間を経過した2026年6月20日から5年、すなわち、2031年6月20日となります。
この30年~5年説、どれをとっても、いま現在の段階で、書類廃棄はあってはならないことになります。
④みんながひっかかってる佐川局長の嘘について
え。ということは、ちゃんと規定されてるのに、佐川局長の「規則に基づき、保存期間1年未満とされている」ってのは、どういうこと?
と思われたでしょう。それこそが、佐川局長の答弁の根拠となっている「細則」なんです。この細則、Webで公開さえされていないんですけどね。(情報公開したらやっと出てきます)
では、この細則とは何か。じつは、「財務省行政文書管理規則」で規定されています。すなわち、
本表が適用されない行政文書については、文書管理者は、本表の規定を参酌し、当該文書管理者が所掌する事務及び事業の性質、内容等に応じた保存期間基準を定めるものとする。
これですね。つまり、逆に言えば、文書管理者レベル、つまり細則で廃棄を決められるのは、「本表(財務省行政文書管理規則 別表)が適用されない行政文書」にしかすぎないんです。
なので、この「財務省行政文書管理規則」で規定されている文書を、下位規定である細則をもって勝手に捨てることは、できません。
あたりまえですが、労働基準法があって、就業規則があるのにもかかわらず、それに反するような内容の課内内規を勝手に作って、課長権限で、「うちの課内規定では、課長が残業時間決めていいって書いてあるし、それでオレが、うちは残業300時間て決めたんで、労働基準法とか就業規則になんて書いてあっても、そっちが、うちの規則として優先されるんで」と開き直っても、労働基準監督署はそんなもん認めませんから。(笑) 罪になるんですよ、罪に。嘘だと思うなら、裁判の場で、そう主張なさってみてください。
ということで、佐川局長の答弁はすでにここで、完全に崩れているわけですが、さらに、徹底的に潰します。
⑤そもそも(←正しい用法)、事案終了してないし
問題の土地は一括払いじゃありません。分割払いで、完済が10年先です。そして、佐川局長は、「売却代金の分割払いについて今受け取っているということでございます」「私ども、先方の学校法人に対して、一億三千二百万のきちんとした債権を 保有しているということでございます」と、明確に支払いが完了していないことを認めています。
住宅ローンで考えれば当たり前ですが、契約書にハンコ押したという行為で、事案は終了してません。完済するまではローンあるんです。しかも、この場合、銀行にお金借りての支払いじゃなくて、国に対しての債務です。なので、10年分割の債務が終了するまでは、事案は終了してません。それは会計監査院も、明確に認めちゃってます。
⑥ていうか、専門家から見ると、契約自体も終わってません
この森友学園の契約書第26条には、10年間の買戻し特約が規定されていました。い。つまり、森友学園は、売買物件について平成29年3月31日までに必要な工事を完了し、指定用途(注:学校用地)に自ら供さなければならない」(第23条第1項)とされ、この指定期日までに土地を指定用途に供さない場合、国は売買物件を買い戻すことができるという特約が付けられています。
しかも、国による、この買戻権は売買契約の締結日から10年間有効です。つまり、身も蓋もなく言っちゃうと、森友学園の運営がうまくいかなかった場合でも、2年や3年でやめちゃって転売、みたいなことはできませんよ。学校閉めて転売しちゃう場合も、1年や2年でそれやられたら、あまりに見え見えでアレなんで、最低10年は待ってね。という特約です。
そして、しかも、この買戻権については、売買契約締結時に、国土交通省を買戻権者とする付記登記をすることで、国の権利の保全が図られています。
で、実際に、森友学園の財務状況は積立ゼロとかで、私学審議会でも「「基本金がゼロだから計画性がない。」「かなり赤字になっているのでは」「こんな絵空事でうまくいくとはとても思えない」とボロクソだったわけですから、うまくいかない可能性は、さんざん指摘されていたわけです。
そして、事実、今年3月31日までに学校を作ることができなかったので、まさに、この特約によって、国は土地を買い戻しできるわけ。
つまり、この契約自体、売買契約の締結日から10年間、最短でも今年の3月30日までは、契約自体も終了していないのです。
で、ここで、もうひとつ。
刑法における公用文書等毀棄罪は、単に書類をシュレッダーかけたとか燃やしたとかだけじゃなくて、「隠匿」しただけでも、成立します。
つまり、今年2月28日、佐川局長が「廃棄しました」と言った瞬間、その瞬間に、そして、今月9日、官房長自ら、「この世にない」とおっしゃってますから….あとでどこかから出てきたとしても、お気の毒ですが、罪は成立しています。
というわけで、この告発状は、そのまま報告書にして裁判所に出していただければ、被疑者否認でも逮捕状取れますので、検察の皆様としては、国民の期待を背負って、すみやかに行動なさっていただきたいものです。
もちろん、それでも不起訴、という場合は、それなりの説明が求められることは言うまでもありませんわよ。
告発状
http://shiminnokai.net/doc/kokuhatsu170510.pdf
「森友学園」の交渉記録廃棄 当時の財務省幹部らに告発状
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170515/k10010982261000.html
5月15日 17時51分 NHK
学校法人「森友学園」に国有地を売却するまでの交渉記録を財務省が廃棄したとしていることについて、市民団体は15日、「交渉記録の保存期間を1年未満とした財務省の解釈は違法で、何らかの不正行為を組織的に隠蔽するためだった可能性が高い」として、財務省の当時の幹部らに対する告発状を東京地方検察庁に提出しました。
財務省は大阪・豊中市の国有地を学校法人「森友学園」に売却するまでの交渉記録について「財務省の規則で保存期間は1年未満となっており、去年6月の売買契約の締結後に廃棄した」と説明しています。
これについて市民団体は15日、「保存期間を1年未満とした財務省の解釈は違法で、何らかの不正行為を組織的に隠蔽するためだった可能性が高い」として、公用文書毀棄の疑いで財務省の佐川理財局長や当時の幹部など7人に対する告発状を東京地方検察庁に提出しました。
告発状を提出した市民団体の八木啓代代表は「国有財産の処分などに関する決裁文書の保存期間は30年で密接に関連する文書も同じように保存するよう国の法律やガイドラインで定められている。一連の交渉記録を軽微な文書と見なして保存期間を1年未満としたのはこじつけというべきで、こうした財務省の姿勢に多くの国民が納得していない」などと主張しています。
東京地検は今後、告発状の内容を精査したうえで、違法性の有無を慎重に検討するものと見られます。
財務省の「細則」に基づき破棄を判断
森友学園の国有地問題では、籠池前理事長はこれまで国と交渉する際に安倍総理大臣夫人の昭恵氏の名前を出したと説明し、行政側にそんたくがあったという見方を示していますが、国の交渉の記録は問題が発覚する前に廃棄されていたため、詳しい経緯が十分に検証できない状況が続いています。
財務省は政治家の関与や行政のそんたくを否定していますが、NHKが先月行った世論調査では政府の説明について、「あまり納得できない」や「全く納得できない」と答えた人が7割を超えています。
なぜ交渉の記録は廃棄されてしまったのでしょうか。
財務省の佐川宣寿理財局長はこれまで国会で、「財務省では『行政文書管理規則』に基づいて文書管理をしているが、その下の『細則』で『歴史公文書等に該当しない行政文書の保存期間は1年未満とする』とされ、一般的な面会などの記録は歴史公文書等には当たらないという判断で、保存期間は1年未満となっている」と答弁しています。
答弁に出てくる「行政文書管理規則」は、8年前に作られた「公文書管理法」に基づいて各省庁が定めているものです。
財務省が設けた管理規則では、公文書を28の類型に分け、3年間から最長30年間の保存期間が設定されています。この中には「国有財産の処分に関する重要な経緯を示す文書」という類型があり、保存期間を10年間から30年間と定めていますが、佐川局長はこの対象となるのは国有地取得の要望書などで、森友学園との交渉記録は含まれないという見解を示しています。
一方、管理規則のどの類型にも当てはまらない文書の扱いについては、別に「細則」を設けて定めています。
財務省は、この「細則」で、歴史資料として重要な文書などに当たらないものは保存期間を1年未満と決めていて、森友学園との交渉記録はこれに該当すると判断していました。そして、去年6月に国有地の売買契約を学園と結んだ時点で、事案が終わったと判断し廃棄したとしています。
佐川局長は「土地の売買契約書を結ぶまでの経緯が集約された契約書はきちんと保存されている」として、適切な判断だったという考えを示しています。
法制化後も問題相次ぐ
公文書の管理をめぐっては、平成19年に、公的年金の記録がずさんに管理されていた「消えた年金記録」問題や、薬害肝炎患者のリストが倉庫に放置されていた問題が相次いで発覚しました。
こうした教訓から、平成21年に作られたのが「公文書管理法」です。
この法律では、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づけて適正な管理や保存を図ることが定められています。また、国民への説明義務を果たし、政府の意思決定の過程を検証できるようにするため、重要な会議の記録を残すよう定めています。
ところが、法律の施行後も公文書管理をめぐる問題が相次いでいます。
平成24年には、東日本大震災に関連する政府の重要会議のうち、「緊急災害対策本部」など10の会議で議事録が作成されていなかったことが明らかになり、議事の概要を事後的に作成する異例の事態となりました。
また去年、防衛省が当初破棄したと説明していた南スーダンに派遣された陸上自衛隊の「日報」が、実際には電子データで残っていたことがわかり、国会で大きな議論となりました。
公文書管理法は施行から5年をめどに見直すことになっていて、国が公文書管理をどのように改善していくのか現在、対応策の検討が進められています。
財務省と告発した団体の主張
国有地売却に関して、財務省の佐川理財局長は「森友学園との売買契約の締結をもって事案が終了したので、面会などの記録は廃棄した」と国会で答弁しています。
これについて、告発した市民団体は「森友学園からの代金の支払いは10年間の分割払いのため完了しておらず、事案が終了したというのはありえない解釈だ」と主張しています。
また、佐川局長は「財務省の行政文書管理規則で、国有地の売却に関して決裁文書などについては30年保存することになっているが、面会などの記録はそうした文書に該当しない」と答弁しています。
これに対し、市民団体は、面会などの交渉記録も決裁文書と密接に関連する行政文書なので公文書管理法で同じ期間保存しなくてはならないとされていると主張しています。
「法の精神が全くうかがえない」
公文書管理法の制定に関わり、内閣府の公文書管理委員会で委員長代理を務める三宅弘弁護士は財務省の対応について、「交渉の過程をできるかぎり残そうというのが公文書管理法の趣旨だ。8億円を値引きした交渉の記録は、契約が成立したので廃棄したという財務省の説明には、公文書管理法の精神が全くうかがえない」と批判しています。
そのうえで、「保存期間が1年未満の文書については、廃棄されたもののリストもなく、誰が廃棄したのかもわからないのが現状だ。こうした文書の扱いは、国民の共有財産をどう残すのかという観点で議論する必要がある」と指摘しています。
「今回の問題を契機に体制の整備を」
公文書管理が専門で、内閣府の公文書管理委員会の委員を務める学習院大学の保坂裕興教授は、今回の財務省の対応について、「公文書管理法の趣旨から考えると望ましくない事態だったと思う。国民が公文書を通して行政機関をチェックし点検することが本来必要である。今回の国有地の売却は数億円を左右する事柄であるにもかかわらず、財務省は公文書によって説明責任を果たすことができなかった」と批判しています。
そして、各省庁での公文書管理の体制について、「欧米と違って公文書管理の専門職員が現場に配置されていない。体制が整備されないかぎり、同じような問題が今後も起きる。今回の問題を契機に政治や行政を挙げての課題だと認識して対処すべきだ」と指摘しています。
財務省「文書の管理は法令に基づき適切」
財務省は「告発状の提出を確認しておらず、内容も見ていないのでコメントできない。文書の管理は、法令に基づいて適切に行っている」としています。