「文書は間違いなく本物。大臣や次官への説明用として担当の高等教育局専門課が作成した」――。メガトン級の内部告発だ。加計学園の獣医学部新設を巡る「総理のご意向」文書について、文科省前事務次官の前川喜平氏が25日発売の週刊文春で「本物」と認定。安倍首相の「威光」をカサに着た内閣府サイドの圧力の実態をブチまけた。前川氏は同日の朝日新聞にも登場、TBSの取材にも応じていている。
当時の文科省トップが「正式な文書」と認めた記録を、勝手に「怪文書」と決めつけた菅官房長官は国民に詫び、首を差し出すのがスジ。ところが、前川氏の“風俗通い”をネタに今なお開き直った強弁を繰り返す。とんだ恥知らずだ。
■官邸はいまだに「怪文書」扱い
〈官邸の最高レベルが言っている〉
〈「できない」という選択肢はない〉
居丈高な態度で筋の通らない要求を強引に迫る内閣府・地方創生推進事務局の藤原豊審議官らの発言記録を一つ一つ、前川氏は文春の取材に「事実」と認め、知る限りの経緯を証言している。
8年間で15回も申請を蹴られた獣医学部新設のスピード内定の出来レース。安倍の「腹心の友」の希望通り、行政が歪められた実態を前川氏は「『赤信号を青信号にしろ』と迫られた」と表現。問題の〈総理のご意向〉という言葉については、こう語る。
「ここまで強い言葉はこれまで見たことがなかった。プレッシャーを感じなかったと言えばそれは嘘になります」
そして「『これは赤です。青に見えません』と言い続けるべきだった。本当に忸怩たる思いです」と反省の言葉を口にしているのだ。
文科省の当時の最高責任者がここまで腹をくくって証言した以上、首相の“腹心の友”への便宜供与を裏付ける文書の内容は、ますます信憑性を帯びてくる。
ところが、安倍官邸は懲りない。松野博一文科相がお手盛り内部調査で、「文書の存在は確認できなかった」と発表したのをタテに、菅官房長官は「出所不明」の怪文書扱いを続けている。
「官邸サイドが裏で繰り返すのは、前川氏が政権に怨恨を抱いているとのレッテル貼り。天下りの組織的あっせん問題の責任を取り、わずか半年の任期で依願退職に追い込まれたことに、前川氏は恨み骨髄。ありもしない文書をデッチ上げ、メディアに持ちかけた『自作自演』のシナリオを吹聴しています」(官邸事情通)
そこに追い打ちをかけたのが、例の“出会い系バー”常連報道で、官邸サイドは「あんなハレンチ漢の証言を信用したら痛い目に遭うぞ」と、メディアに妙な“恫喝”を加えているという。
「安倍首相が『私が働きかけて決めているなら責任を取る』と大見えを切った手前、菅官房長官らは“怪文書”と言い張るしかないのでしょう。とはいえ、文書の信憑性と次官の風俗通いは無関係。政権が強弁すれば、シロもクロになるような振る舞いは、『恥を知れ』の一言です」(政治評論家・本澤二郎氏)
■待ち受けるさらなる暴露
前川氏は、年商812億円を誇る世界的な産業用冷蔵冷凍機器メーカー「前川製作所」の御曹司で、妹は中曽根弘文元外相に嫁いだ“華麗なる一族”の出だ。
当然、官邸の横やりで天下り先を失っても困らないため、政権の裏側で何が起きているのか、その腐敗の真相を遠慮なく暴露できる。
すでに「告白の内容はまだおとなしい。昨年12月に新設が合意に至る直前の“ご意向”圧力は特に凄まじかったようです。まだ表に出ていない文書もあるはず。前川氏は面倒見がよく、人望がありますから、歴代次官OBや“奇兵隊”と称する後輩の現職官僚も味方しています」(文科省関係筋)との声もある。
民進党も前川氏の疑惑追及チームへの出席や、国会招致も視野に入れている。さらなる決定打が飛び出せば、安倍首相は政権発足以来最大の窮地に立たされる。