東京新聞の望月衣塑子と申します。よろしくお願いします。
いままで武器輸出をテーマに取材をしてまして、だいたい講演会は原稿を用意して準備してたんですけど、いまこの騒ぎの中で今日は用意はしておりません。ただ、一連の流れの中で、どうして官房長官が再調査ということに踏み切った、一応表向き松野大臣が会見でおっしゃりましたけど、という流れに至ったまでの経緯と、やっぱりなぜ私がいま会見室に乗り込むことになったかというあたりも含めて、お話しさせていただきたいと思います。
もともと私は籠池さんの問題から少し入ってまして、菅野完さんのお宅で町浪さんのお話等を電話づてにいろいろ聞かせていただいておりました。そのとき一番印象的だったのは、なぜ籠池さんがああやって安倍首相を信奉していったかというところの一番の大きな契機というのは、教育基本法の改正だったということでした。
それまでは、戦後、ああいうちょっと右チックな発言をしてても、役所に行っても、ちょっと変なおじさんという形でまっとうになかなか取り扱っていただけなかったそうなんですね。それが、ところが、第一次安倍政権で教育基本法の改正をしたとたんに、役所の態度がコロっと変わったと。「こんなにも政治というのは自分への態度を変えるぐらい影響力があるんだ」ということで、そこから急激に安倍さんに心酔していったという話を聞いておりました。
一方で今回、前川さんなんですが、うちは事前に一人のナカザワ君という記者だけが潜入していろいろ現場を取材してたんですが、前川さんへの接触はできませんでした。
で、5月17日に「総理のご意向」という大きい見出しをバンっと見させられまして、非常に衝撃を受けました。あんな生々しい文書が役所にはやっぱりあるんですね。その後なぜか、そのときはまだ誰がこういう文書を出しているのかさえ、私はよくわかっておりませんでした。その後、あれを怪文書というふうに非常に普段冷静沈着な菅さんが会見でこきおろしてる様子を見て、ちょっと尋常じゃないなと思ったんですね。
で、その後に告発の動きがあるような情報が永田町を回ってまして、その流れの中で5月の22日に、あの読売新聞の「前川さんが出会い系バーに通っていた」という、およそ事件になるかならないかもわからないような疑惑の報道がああいう形で出たんですね。
私、あの記事を見た瞬間にかなり衝撃を受けました。いままで読売新聞っていうのはやっぱり事件にものすごい強いところでして、私、武器輸出に入るまでは事件報道一辺倒だったので、やはり事件に強い読売新聞っていうのはある種あこがれを抱いてましたし、そういう中で事件を通じて政治家の不正を正していくみたいな、そういう姿勢も感じてたんですね。
それがなぜか、あのようなまだどうにもこうにも「出会い系バーに通っていました」というだけの報道をなぜしたのかと。あのあたりからだんだん事が動いていきまして、その同じ週に週刊文春と朝日新聞で、実名告発の前川さんの動きが出てきました。
以降いろんな方にお願いしながら、なんとか前川さんのお話を聞かせてもらいたいというのをやりまして、私たちも遅ればせながら、その後1、2週間後だったと思うんですが、記者会見の後に個別でのインタビューに応じていただけました。
そのときに私のポイントとして、喜平さんがまずそのバーになんで通ってたのかというのが、会見で言った「社会調査のため」っていうところがどうしてもなかなか腑に落ちないというのが一点と、もう一点、なぜここまでもうほとんど政権を敵に回すようなことを彼がしたのかという、この二点ですね。まず一番初めそこが気になってました。
で、彼が自分が官僚の時代に、そこは安倍政権の意向を受けて動いてたんですけど、彼は逆に基本法の改正が行われたことで、いま憲法9条を含めた、あの当時、戦後民主主義をなんとか日本にきっちり根付かせるために、あの憲法9条を含む憲法と合わせて、非常に民主主義を根付かせるために大切なものとしてあの基本法があった。その基本法が大きく変えられてしまったところに「これは民主主義が壊されていくんじゃないか」と、そういうのを官僚の立場なのでその当時はそういうふうには言えませんでしたが非常に感じていたらしく、教育基本法の前の前文を全部暗唱してお話をされてまして、そういう教育の理念そのものが大きくいま変質されてしまったということをお話ししていました。
あと、その出会い系バーについて、これは私の女性的な感覚だと思うんですけど、どういう目的で何のためにそんなに通っていたのかって気になりました。で、週刊新潮とか文春さんの記事を読みつつ、彼がその後ボランティアで参加していたキッズドアさんですとか、あと福島の自主夜間中学、公立の夜間中学を設立を目指す会の大谷さんっていう方たちを含めて、いろいろ取材したんですね。
その中でやっぱり彼は、どんなに貧しい子たちでも、あと戸籍がないような、不法移民で戸籍のないような子供たちでも等しくきちんと教育を受ける必要があって、教育行政っていうのは全体を取り仕切るものだけれど、やっぱり現場で、例えばもうぜんぜん中学・高校も卒業できなくて、「ようやく赤とか黒とか白とか読めました」っていうおじいちゃんの声ですとか、不登校の子供たちの声ですとか、そういうのを聞いて、それが「赤が読めるようになった。黄色が読めるようになった」ということに、彼はなんかその現場のたぶん教師の喜びみたいなのをすごく感じて。教育行政というのは、一つ日本の方向性をつくる上では大切なんだけど、時としてやっぱり政治家のためだけに自分が仕事をしている。「これは国民のためになってるんだろうか」というような気持ちになったことも多々あったそうです。
そういう中でやっぱり現場を見たい。本当に困ってる人たちがどういうところにいるのかっていうところから発して出会い系バーに通い、そこで知り合った女の子といろんな話をして、高校の夜間高校で、通信制の高校でみんな卒業資格だけは持ってんだけど、ほとんど○×とか穴埋めだけで卒業できちゃうような、いまの通信制の問題点なんかもその子たちの話を聞きながら感じることができたんですね。
その中で、いま執筆中である夜間中学の問題についての本も書いていると。だから、後半の1時間ぐらいは、やっぱり教育行政、いかに子供たちに恵まれた状況、恵まれた状況にない子たちを含めて教育を与えてあげるかってことが大切かっていうのを得得と言ってまして、私、そういう前川さんのやっぱり男気であり人格的な得っていうのをすごく感じました。
で、この人がやっぱり、いまじゃあなんでこんな告発に至ったのかっていうのは、やはり再三繰り返されてますけど、加計学園に見られるのが最大に大きかったですけど、行政による、つかさつかさで来た行政が、大きく政府の官邸の意向だけで重要データのきっちりした数値もないままに認められ曲げられようとしているという、「そこをもう一度、官僚のあるべき姿に戻ってもらいたい」と、そういう思いで外に出てからというのはある意味お恥ずかしい話だと思うけれど告発をしましたという話でした。
合わせましてちょっとここに出ないですけど、詩織さんですね。詩織さんにもインタビューをさせていただきました。彼女もやはり、山口さんという当時はTBSの支局長という身分で、初めに事件が起きて警察に持ち込んだ段階でも、「いや、これはさすがにTBSだし、支局長ですし」というふうになかなか受け取っていただけない。で、「撮ってる動画とかかなりの証拠がないとできませんよ」という中で、一生懸命ホテルで降ろされるところですとかタクシーの運転手さんの証言を積み重ねて積み重ねて警察を説得して、いろんな方の証言を取ってようやく…。その前に示談交渉なんかも持ちかけられてはいるらしいんですよ。でも、やっぱり「ここで示談に応じたら真実はうやむやになってしまうよ」ということを弁護士の先生にも言われて、だいたい示談に応じる、示談に応じなければ名前を出した瞬間に皆さんに顔とかが分かってしまうので、それによって家族の方とかが被る被害とかを考えると、穏便に示談といってもいいんじゃないかということも勧められてたらしいんですけど。
彼女の中で、自分が現在フリーですけど、ジャーナリストとしてやっていくにはこの問題に目をつぶってはいけない。それから調べられてるときに、ちょっと変な話ですけど、「処女ですか」とか「こんなものはだいたい動画がないと難しい」とか、いろんな意味で被害者の女性が虐げられるような発言を多々捜査員から聞いたりして、ここの問題点なんかもやはり大きく声を出すことで、自分が自分の立場を身を削りながらも、いまの法律の問題点とかを追求していかなきゃいけないんだと。
そういう彼女の、なんて言うんですか、自分の被害者を…。なんとか山口さんをおとしめたいということだけではなくて、やはりいまの法律がしっかり機能しているのか、そしてなんでこういう性被害の被害者たちが泣き寝入りにならなきゃいけない状況があるのかと、そういうのも自分の身を使ってでも訴えていかなきゃいけない。なんかどこか社会的な使命感を持って表舞台に、やっぱりすごい勇気だと思うんですね、出てきたと。
私は、前川さん、詩織さんというお二人にそれぞれ話を聞いて、やっぱりある意味なぜここまで政権が横暴を働き続けられるのか、あるものをないと言い、調査して出してる告発してる職員がいるにもかかわらず、「結果、共有フォルダには文書はなかった」というような報告を文科省にさせたりとか。官僚はもう完全に板挟みになってる状況だと思うんですね。
その中で一番の、やはりこれ、誰がこういう枠組みを決め、誰がここまでもうどう見てもおかしい話を白を黒と言わせ続けているかというところに、やっぱり松野大臣ではなくて、そこのトップである安倍総理であり、ナンバー2でやはり全体を統括している菅さん、菅さんのかなりの力が強いんではないかっていうのが、私がいろんな…。前川さんの取材で出てくる和泉補佐官なんかは、前川さんがすごく信頼している秘書さんなんですけど、そういう方々がやはりいろんなところで動き回っている状況を知るにつけ、やはりこれは菅さんに直接この思いと怒りと、そしてなんとかしてほしいという気持ちをぶつけて分かってもらわないといけないというのが、ふつふつと皆さんへのインタビューなどを通じて感じるようになりまして。
本来は政治部だけでじゃないとあそこには入れないんですね。うちの会社はそこがほんとにありがたいことで、「質問をぶつけたい」と言いましたら「いいぞ」というふうに言ったんですけど、その質問がとんでもなく長いし、すごい食ってかかったような話なので、初めはかなりハレーションが出ました。
ただ、しつこい私と、あとジャパンタイムズの吉田玲滋さんというすごく頼りになる先輩記者がいらっしゃいまして、その方で二人でなんか攻撃してる感じはあったんですけど、2回目のインタビューの後に、私、後日知りましたけど、会見の後に菅さんが総理執務室に会見後にそのまま直行して、どうもそこでやはりこれだけ世論の、つまりきっちり調査しろという風があるというのをおそらく安倍総理に伝えたのかなと思うんですが、その日の夕方から夜にかけて杉田さんと安倍総理、菅官房長官が会談をし、翌日に再調査を発表というふうになりました。
だから、私はそのときに思ったのはやっぱり伝わる。菅さんだから言ってもダメとかではなくて、国民の声を私たちがやっぱり背負って、「これだけの怒りと疑問を持ってるんだ」と「せめてこのぐらいはしてほしい」ということを、少しずつ少しずつやっぱり伝えて怒りを伝えていくことが、それをしないとやっぱり皆さんの怒りとか国民の方が疑念に感じているものって伝わらないんだなと。
記者っていうのはちょうどその狭間にいるので、なかなか番記者になると彼のいいところもたくさん見ると思うので、私のような攻撃的な質問はおそらくしづらいのかなと思うんですけど、それでもいまこの世論が何に疑問を持って、やっぱりどういうものをきっちりしてほしいと感じているのかを、やっぱり記者は伝えていかなきゃいけない。それがやっぱり重要な仕事だなというふうに感じました。
で、今日も「再調査」って言うとみんなワーイってなったんですけど、これ皆さんご存じのとおり、文科省だけなんですね、今のところ。実際はこれ、加計学園を主導してるのは内閣府です。やはりこれは、安倍総理、菅さんの意向を受けて、内閣府の藤原さんですね、審議官等が動いていらっしゃいます。和泉さんも動いていらっしゃいます。ここの仕組みをきっちり説明するには、やはり内閣府の調査、それからどういう経緯があったのかを全部オープンにしてもらわなきゃいけないんですけど、いまのとこ山本幸三大臣の言い分は「調査はしたけど資料もなかった。記録も記憶もなかった」ということなんですね。
ここについてまた今日、先ほどちょっと10時すぎの会見でまたジャパタイの吉田さんと少し詰めました。私が、「ここはやはりもう一回内閣府の調査も第三者による調査をしてくれないと文科省のとこだけではやっぱり見えないものがあります」というのを2、3度お願いしましたが、「いや、もう大臣が言ってるように調査はやった」と「もう一回やる必要はない」っていうふうに突き返されてたんですけど、ジャパタイの吉田さんが何回か「とはいえ、なんか資料がなくてもコンピューターをもう一回復元すればなんか出てくるんじゃないですか」とか、うまくなかなか乗せながら言ってるときに、ポロっと言うのか言ってしまったのかわかんないんですけど、そういう「今後、文科省の調査の結果次第でどうするかの対応は検討していきたい」みたいに少し踏み込んだ発言をされたんですね。
これは私からすると、官房長官がやっぱりこれを言ったってことは非常に大きいので、ここをやはりさらにさらに追求を続けつつ、「やはり国民が文科省だけの調査では納得しないんだよ」ということを今後も伝えていって、いまなぜこのようなことが起きているのか、もしそこに不正が働いてるならやはりもう一回原点に立ち止まって、一からそれこそもう一度競争、京都産業大とか応募したかった大学を全部きっちり公開な場において競わせる必要があるんじゃないかなと思ってます。
まだ途中段階です。一回再調査が決定してそれは少しほっとしたものの、やっぱり中身を見ると、これでは結果もうやむやなままに官邸のいいとこだけが出て「それはでも真実じゃない」みたいな話で終わってしまう可能性もあるので、まだまだこれからが闘いだと思っております。
今週、共謀罪の採決というのも出されていますが、もともとの問題の根本っていうのは同じだと思っております。いまの政治を少しでも国民の手に取り戻すようになればと思っております。
長くなりました。ありがとうございます。