まるで、時代劇で将軍と御用人と代官と御用商人の関係を見せられているようである

 憲法の1条はわが国の主権者(主)は国民大衆であると明記している。そして、21条は「一切の表現の自由」を保障しており、それは「情報の自由」を意味し、その一環として、主権者国民は権力者の行為について判断する材料を「知る権利」を有する……と広く認識されている。

 そのような前提の下に、公文書管理法は、「国の活動を現在及び将来の国民に説明する義務が全うされること」を目的として(1条)制定され、「行政文書」とは「行政機関の職員が職務上作成し、組織的に用いるものとして保有しているもの」を言う(2条4項)とされている。

 そうである以上、財務省と国交省が、国有(すなわち主権者国民の)財産である土地を、安倍首相と親しいことを標榜し、安倍夫人も深くかかわってきた森友学園に、破格の安値で売却すると決定した過程の記録は残っていなければならないはずである。

 ところが、それを問われた財務省の局長は、「その売却は法令に則り適正に行われ、売却が済んだので関連文書は廃棄され存在しない」と繰り返した。ふざけた話である。明白に不公平な国有財産の処分に疑問が向けられて国会で質問を受けて、そのような答弁を繰り返す官僚が咎めも受けず昇進したとは、この国が法治国家ではないことを示している。

 同じく、獣医増員の必要性を立証できず、さらに既存の大学を超える研究の可能性も示せない加計学園の学部新設の認可を、内閣府側が「総理の意向」を根拠に何回も文科省に迫った行政文書の存在が発覚しても、当初、文科相はその存在を認めなかった。それが、内部告発を経て、その存在を認めざるを得なくなったら、今度は、「内容が不正確であった」と大臣が謝り、その上で、関係した官僚が処分されてしまった。話が逆であろう。

 首相と親しい者が、法律に反してまで不当に利益を得る。それに協力した役人が出世して、それに逆らった役人は処分を受ける。まるで、時代劇で将軍と御用人と代官と御用商人の関係を見せられているようである。

 こんな政治と行政の私物化を終わらせられなければ、私たちは愚民であろう。