9月13日付のイギリスの「ザ・ガーディアン」がリオと東京の五輪招致にIOCの票の買収があった容疑について新展開があったことを報じた。以下が記事。
リマでの総会で2024年パリ、28年ロサンゼルスでの五輪開催を決定したニュースに世界の耳目が集まることを期待していたその日に、2016年リオ、2020年東京五輪の招致チームによる買収容疑についての新たな疑惑をIOCは突き付けられた。
二つの開催地が決定した直後に汚職スキャンダルの渦中の人物が高額の時計や宝石を購入していたという調査結果が出て、この二都市の決定についてさらなる調査が開始されることになった。この事実がIOC総会での2024年、2028年の開催地決定セレモニーに暗い影を落としている。
『ガーディアン』紙は資料を精査して、信用を失墜した前IOC委員ラミーヌ・ディアクの息子パパ・マッサタ・ディアクがリオと東京の招致キャンペーンの前後にフランスの宝石店で高額の買い物をしていた証拠を得た。
ブラジル連邦検察局はフランス検察局の調査結果を踏まえて、支払いが「IOC内部に強い影響力を持つラミーヌ・ディアクの支援と票の買収の意図をもって」2016年リオ、2020年東京の招致成功のためになされたという結論を出した。
昨年、『ガーディアン』紙は、2020年の五輪開催都市レースのさなかに、東京五輪招致チームからマッサタ・ディアクと繋がりのあるブラック・タイディングスと称する口座へ七桁の送金があったことを暴露した。これらの支払は二回に分けて行われた。取引額は約170万ユーロで、2013年の9月7日、ブエノス・アイレスで開かれたIOCによる開催都市選定の前と後になされていた。
フランス当局の捜査にもとづいて、検察局は2013年9月8日に、ブラック・タイディングスはシンガポールのスタンダード・チャータード銀行の口座から8万5000ユーロをパリのある会社宛てに送金し、それがマッサタ・ディアクが宝石店で購入した高額商品の支払いに充てられたことを明らかにした。
ブラジル検察局によると、2009年から10年にかけてマッサタ・ディアクは一回6万5000ユーロから30万ユーロの支払いを、彼がコントロールしていると見られる七つの口座から、フランスとカタールの店舗およびモナコとニューヨークのオフショア・カンパニーに対して行っている。
2009年10月2日、コペンハーゲンでのIOC委員会で五輪開催がリオに決定したその日には、ディアク家と繋がりのあるパモジ・コンサルタンシイ社から7万8000ドルの支払いがパリの宝石店に対して行われている。
ブラック・タイディングスについての調査は日本の国会の審問に付託されたが、同国の総理大臣は招致のための票買収について調査を進めているフランスの検察当局と協力することを約束した。しかし、ブラジルからの今回の暴露によって、次回の五輪開催国に対する調査が再開され、どのようにして東京が五輪開催権を獲得したのかそのプロセスが解明されることになるだろう。
ディアクはこの疑惑に対しては回答していない。これまでのところすべての悪事を否定しており、彼に対する今回の主張は「世界スポーツ史上最大の嘘だ」と語っている。
記事はここまで。
東京の五輪招致については、シンガポールのブラック・タイディングスという怪しげなペーパーカンパニー(テレビが取材に行ったが、ボロい団地の一室であり、看板もなく、無人だった)にコンサルタント料が振り込まれたことが国会で問題になった。
この送金の事実を明らかにしたのは、国際陸連の汚職と資金洗浄を調査していたフランスの検察局である。
国会でも問題にされたが、当時の馳浩文部科学相は「招致委員会は電通からブラック・タイディングス社が実績があるからと勧められ、招致員会が契約することを決定した」と語っている。
ブラックタイディングス社の「実績」というのはペーパーカンパニーを経由しての資金洗浄と買収のことである。
支払いは2013年7月と10月の二度にわたって行われたが、これは開催地決定の前後に当たる。誰が見ても「手付金」と「成功報酬」としてしか解釈できない。
国会での答弁では、二度にわけた理由を問われて「金がなくて一度に全額払うことができなかった」とされているが、実際には招致委員会は資金潤沢であり、この説明にはまったく説得力がなかったが、日本のメディアは深追いせず、これを放置した。
文科省、招致委員会、電通・・・五輪招致をめぐって、これから忌まわしい事実が次々と暴露されるだろうけれど、それらを解明するのが「海外の司法機関」であり、それを伝えるのが「海外のメディア」であるということに私は日本の社会制度がほんとうに土台から腐ってきていることを実感するのである。