「自民が一貫して改憲政党というのは誤り」河野氏が講演

 自民党元総裁で衆院議長も務めた河野洋平氏が31日、東京都内で講演し、安倍晋三首相が憲法9条を改正して自衛隊の存在を明記する考えを表明したことについて「理解しようがない。9条はさわるべきではない」と批判した。

 河野氏は、首相が憲法記念日に合わせた集会に寄せたビデオメッセージで9条改正を目指す考えを明らかにしたことについて、「突如としてああいうことをおっしゃる言い方に全く驚いている」と指摘。9条について「このままでも国民は納得しているのだから、このままでいい。自衛隊の存在がある以上(憲法に)書くべきだという人もいるが、それは間違っている」と述べた。

 さらに、河野氏は「憲法は現実に合わせて変えていくのではなく、現実を憲法に合わせる努力をまずしてみることが先ではないか。憲法には国家の理想がこめられていなければならない」と強調。その上で、「護憲党と改憲党が合併してできた自民党が改憲を主張する政党だなんて言うのは、スタートから認識が間違っている」と語り、安倍政権の下で憲法改正の議論を進めることに懸念を示した。(松井望美)

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「自民が一貫して改憲政党というのは誤り」河野氏が講演

 河野洋平元衆院議長(元自民党総裁)が5月31日、東京都内の講演で憲法改正について語った主な内容は次の通り。

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 安倍(晋三)さんは「自民党は一貫して改憲をめざしている政党だ」という。しかし、これは間違いだ。自由民主党は自由党と民主党が合併してできた党だ。合併するときの自由党は吉田(茂)さんがリーダーで、いわば護憲政党だ。民主党は鳩山(一郎)さんがリーダーで、改憲を主張する人が多く集まっていた。護憲党と改憲党が一緒になって改憲党になるとは思えない。合併してできた自由民主党は一貫して改憲を主張する政党だなんて言うことは、明らかにスタートから認識が間違っている。

 突如としてああいうこと(9条改正)をおっしゃる安倍さんの言い方に、私はまったく驚いている。理解のしようもない。私は9条はさわるべきではないと思う。このままでも国民の皆さんは納得しておられるのだから、このままでいい。人によっては軍隊というべき自衛隊の存在がある以上書くべきだという人もいるが、それは間違っている。

 憲法は現実に合わせて変えていくのではなくて、現実を憲法に合わせる努力をまずしてみることが先ではないか。「事実上はこうだから憲法をこう変えましょう」と、憲法が現実を後から追っかけて歩いているなんて、憲法にはひとかけらも理想がないのかと言いたくなる。憲法には一つの国家の理想がこめられていなければならない。

 しかも、安倍政権のもとで憲法問題をやるなんて、あり得ないことだ。おそらく最近の日本の政治の中で、もっともこれまでの方向と違う方向をさしている政治の中で憲法を変えるということは、日本の歴代内閣がやってきた方向ではない。安倍(政権)という不思議な政権ができて、その人が指さす方向に憲法を変えていくなんて、私は到底納得できない。それに費やす政治的エネルギーは、他にもっと使わなければならないことがたくさんある。憲法(改正)について、私は同意できない。